04 Feb. 2017

k.mitiko
 

バレエ「フランケンシュタイン」を観て

 

 

 先日テレビでイギリス・ロイヤルバレエ団の「フランケンシュタイン」を

観ました。バレエといえば「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」のような

優雅で夢物語の世界とイメージしがちでしたが、ハリウッド映画の影響も

あって「フランケンシュタイン」の怪物をバレエでどう表現するのか、

興味と怖さを持ちながら観ました。

 

 

それまでの先入観で、怪物をフランケンシュタインと思っていましたら、

怪物を創った科学者の名前であることを知り、物語の世界に引き込まれて

いきました。

 

 

幸せな家庭に育ち、大学に進んだヴィクター・フランケンシュタインは

愛する母の死をきっかけに、生命の謎にとりつかれ、生と死への好奇心から

墓場から死体を掘り出して、専門の医学の知識の全てをつぎ込み、新しい命を

生み出しました。

 

 

しかし自分の創り出した者のあまりの醜悪さに、恐れをなしてその場から

逃げ出してしまいました。

 

 

 

ヴィクター・フランケンシュタインには故郷に美しい婚約者のエリザベスが

居りましたが、家へ帰ってからも自分のしでかしたことの重大さに苦悩し、

別人のようになったヴィクターに心配します。

 

 

一方捨てられた怪物は必死に自分の創り主を追っかけてきます。突然強制的に

この世に生まれ、生きる術を教えられずに見捨てられ、人々に化け物と怖れられて、

創り主から拒否された怪物は、次第に憎しみをつのらせていきます。

 

 



苦しみのあまり心を開かないヴィクター、別人のようなフイアンセの姿に

悩むエリザベス、創造主に見捨てられたと絶望する怪物、三人三様の苦しみが

踊りで描かれていきます。

 

 



絶望から怪物は、ヴィクターの愛する弟、父、エリザベス、友人と次々殺していきます。

 

 

その怒りの原因を創ったヴィクターには手をつけられず、やがて自殺したヴィクターを

後にして物は炎の中へと消えていきました。

 

 

落ち着いた色調のセットと衣裳の美しさ、馴染みやすい音楽に乗ったヴィクターと

エリザベスの複雑なパ・ド・ドゥ(二人の踊り)、怪物とヴィクターのパ・ド・ドゥや

ヴィクターとエリザベスの結婚舞踏会のシーンでは、群舞の中にいつのまにかまぎれて

踊っている怪物が、またいつのまにか友人と入れ替わっていて、観客もヴィクターと

同じ錯覚をしてしまうシーンは、衣裳と照明も効果的に使われていてこの作品の白眉と

なっています。

 

 

愛を求めながら拒否された怪物の哀しみがこの作品の底流にあり、それをクラシック

バレエの表現と今はやりのコンテンポラリーの技法をみごとに融合させていて、

演劇的なバレエに強いイギリスの伝統を、しっかりと受け継でいるロイヤルバレエ団

ならではの舞台に深い感銘を受けました。

 

 

「フランケンシュタイン」についていかに誤解していたかあらためて認識して

原作を読みました。その原作者が、19世紀はじめのイギリスのメアリー・シェリーで

あることは知っていましたが、今回原作を読んで、彼女が19歳の時に書かれたもので、

未来への警告のような作品が、今から200年以上も前に若い女性によって書かれた

ことに驚きました。

 

 

原作は単なる恐怖小説ではなく、見捨てられた怪物が様々な体験を通して成長

する姿が細やかな心理描写で丁寧に描かれていて、人間とは、生命とは、科学の

進歩の功罪、人の心の二面性など現代にも通じる内容に感銘を受けました。

原作の素晴らしさが200年たっても映画や舞台作品として現代に受け入れられて

いるのではと思いました。

 

ロイヤル・バレエ団の「フランケンシュタイン」はクラシックバレエの裾野を

広げ、やがて古典になっていくのではと言われています。
 
 
参考資料
 
フランケンシュタイン      メアリー・シェリー
 
100分de名著         NHK
 
画像はインターネットより引用しました。