ザッハトルテ(独:Sachertorte,ウィーンではサハトルテかサッハートルテ)は、オーストリアの代表的な菓子(トルテ)である。
古典的なチョコレートケーキの一種。ザッハートルテとも呼ばれる。
小麦粉、バター、砂糖、卵、チョコレートなどで作った生地を焼いてチョコレート味のバターケーキを作り、アンズのジャムを塗った後に、
表面全体を溶かしチョコレート入りのフォンダン(糖衣)でコーティングする。スポンジを上下に切り分けて、間にジャムを塗る場合もある。
箸休めとして砂糖を入れずに泡立てた生クリームを添えて食べる。
こってりとした濃厚な味わいを特徴とする。ウィーンのホテル・ザッハーの名物菓子であるが、今日では広く世界各地で作られており、
チョコレートケーキの王様と称される。
歴史
1832年に、クレメンス・メッテルニヒに仕える料理人の一人だったフランツ・ザッハー(ドイツ語版、英語版)が考案した[1]。
飽食した貴族たちのために新しいデザートを作れというメッテルニヒの要望に応えたものであった。ザッハトルテは大変に好評で、
翌日にはウィーン中の話題になったという。当時はザッハーはまだ16歳で下級の料理人にすぎなかったが、ザッハトルテの成功から頭角を現した。
ザッハトルテはフランツのスペシャリテ(特製料理)として好評を博しつづけた。後に次男のエドゥアルトがホテル・ザッハーを開業すると、
ザッハトルテはそのレストランとカフェで提供された。
レシピは門外不出とされたが、3代目のエドマンド・ザッハーのときにホテル・ザッハーが財政難に陥ったのをきっかけに、資金援助をしたウィーンの
王室ご用達のケーキ店「デメル(ドイツ語版、英語版)」が、代償にザッハトルテの販売権を得た。
この際に、「元祖ザッハトルテ」の文字をケーキの上にホワイトチョコレートで描く権利も譲渡したとも言われる。
ここで、デメルの娘がザッハーの息子に嫁いだ際にレシピが流出したとする話があるが[2]、事実とは異なる俗説である[3]。
その後、ハンス・スクラッチ『ウィーンの菓子店』という本にまで、秘密のレシピは掲載されてしまった。ついにはホテル・ザッハー側が、デメルを相手取って
商標使用と販売の差し止めを求めて裁判を起こす事態となった。7年に及ぶ裁判の結果、デメルのものもデメルのザッハトルテ(Demel's
Sachertorte)
として売ることが認められた。ホテル・ザッハーのオリジナルザッハトルテ(Original
Sacher-Torte)はアンズのジャムを内部にも挟むのに対し、
デメルのザッハトルテは表面にのみ塗る、という違いがある[4]。
なお、ザッハトルテは最古のチョコレートケーキと言われることもあるが[5]、18世紀前半には文献上にチョコレートケーキは出現しているので誤りである。
チョコレートを混ぜたケーキはヨーロッパ各地にみられ、ザッハーが最初に生み出したものではない[6]。
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