17 Oct. 2010

大空に浮かぶ色とりどりの熱気球。
眺めるのはいいけど乗るのは高所恐怖症のリンダ氏(トルコレポ−ト1参照)も、THも嫌!
 
13年前、それに乗ってみたという体験レポ−トです。
 
 
 
 
大昔レポ−ト「熱気球に乗って」 1997年(平成9年 77歳時)TH父
 
 
 ロスアンゼルスで小型機に乗りかえ、東の方角に一時間半ばかり飛ぶと、カリフォルニアの平原を横断して
 
シェラネバダ山脈を越えた谷間にレイク・タホと呼ばれる湖がある。海抜1900m最深部490mの青く澄んだ
 
タホ湖は、美しい山の湖として知られ、春から秋まで訪れる人が絶えず、冬はスキ−のメッカとして賑やかな
 
高級リゾ−ト地であるという。
 
 
 参加者11名、日程6日間の小旅行に参加したが、元気な人達は毎日ゴルフである。私は一日だけゴルフで、
 
あとは同年輩のM氏と2人でのんびりすることにした。ところがこのM氏が「観光客を乗せる熱気球があるから
 
乗ってみませんか」と言い出したのである。
 
 
 彼は第2次大戦で生き残った戦闘機乗りだから、空を飛ぶのは珍しくないが、気球には未だ乗った事がない
 
から是非つき合って下さいと熱心に提案するのである。私は屋根の物干し位ならともかくとして、高い所は
 
あまり好きではないし、小さなビルの屋上から下を覗いてもあまり気持ちの良いものではないからどうも気が
 
進まなかった。しかし旅は道連れというからしぶしぶ同意する事にした。
 
 
 ところが夜になって案内役のKさんとM女史が私の部屋に来て、「Mさんは体調が良くないので気球乗りを
 
あきらめてもらいましたが、折角だから3人で乗りましょう」と言うのである。私に対する心遣いかと
 
思った、それもあるが自分達も初体験で、いい機会だから楽しみにしていた事がわかって大笑いとなり
 
3人で出かけることに決定してしまった。
 
 
 さて、翌朝5時に車でホテルを出発し湖畔に向かった。朝早い方が気象条件が良く風が無いらしい。ところが
 
すぐに桟橋の船に乗せられたので、おかしいなと思って聞いてみると、船から気球を揚げるというのである。
 
 テレビで一度見た佐賀の熱気球大会は世界的に有名で、色とりどりの気球が空一杯に浮かんで美しかった。
 
採り入れの済んだ晩秋の平野の風物詩としての印象があったから、此処もタホ湖の空き地で飛ばすものとばかり
 
思っていたのである。
 
 
 船は双胴の船体に甲板と屋根を取り付けた簡単なものである。大きな丸太を水に二本浮かべて、それに横木を
 
渡して固定した筏(いかだ)に、床と天井を取り付けたものと思えば解りやすい。勿論木造船ではない。
 
エンジンは大型の船外機を二機取り付けてある。船室も操舵室も無い吹きさらしで、長い板の腰かけが固定
 
されている。屋根の上は上甲板になっており、金網を付けたア−ムを横に張り出して上甲板の巾を広くして、
 
気球を拡げてふくらます作業をやり易い様に工夫してある。
 
 
 速力は遅いが、湖心の方向へ進んで行くと、二隻の小型高速ボ−トが横について来た。湖上の熱気球に
 
客を乗せる企画は、申請して許可がおりる迄に満二年を要したそうである。勿論世界中に唯一ヶ所、此処
 
だけで他には無い。将来は日本でもやりたいからよろしくと、なかなか宣伝も上手である。安全対策は万全
 
であると強調されたが、それでも濡れねずみになる可能性は少しはあるかも知れぬ、いずれにしても此処まで
 
来たら覚悟とあきらめが肝腎である。
 
 
 本日の乗客は9名であったが、先ず中年の男女2人が呼ばれて上甲板に上った。この2人は上空で婚約をする
 
そうだ。空中での結婚式も今までに何度かあったそうで、如何にもアメリカらしい事である。夜明けの空は
 
あく迄青く晴れ渡って一点の雲も無く、気象状況は最高で風も全く無い。2人を乗せゆるやかに上昇を始めた
 
気球は、何時の間にかはるか中空高く昇って行った。暫くして下降をはじめたので見ていると湖面すれすれまで
 
降りて又昇って行った。そして約一時間足らずの飛行を終って、待ちくたびれた我々の船に戻って来たのである。
 
シャンパングラスを片手に、手をつないで降りて来た上機嫌の2人に、皆が歓声をあげて拍手を送った。
 
それにしても年齢の事が気がかりだったので、傍のM女史にそっと尋ねてみたら、この2人は互いに”ばついち”
 
で、それぞれに子供も居るそうですと、笑い乍ら教えてくれた。
 
 
 いよいよ我々3人が乗る順番となった。カナダから来た中老の夫婦とアメリカの若いOLが2人、それに
 
操縦士が1人だから総員8名でゴンドラは満員であった。
 
 
 既に気球は丸く大きくふくらんでいる。準備完了が確認されると、ロ−プがはずされて気球は昇り始めた。
 
思ったより上昇速度は速かった。下を覗くのは少し嫌な気がしたので、ゴンドラにつかまるようにして
 
遠くの山を眺めていた。空気は冷たいが風は全く感じない。ごうごうとバ−ナ−の音がすぐ上で唸っている。
 
その熱で頭や肩が暖かくて心地良い。
 
 
 かなりの高度に昇ったのか、バ−ナ−の音が止まって、時折ふかす程度になったので、下を覗いてみた。
 
斜め下に母船と2隻のボ−トが小さく見えている。不思議なもので、この高さになると高所恐怖という感覚を
 
越えてあまり恐くない。ようやく落ち着いて景色を眺めることが出来た。雪を頂く遠くの山々が実に雄大で
 
湖の周囲の森の緑がその影を水に写している。
 
 
 気球がゆるやかに廻りはじめたので、おやと思ってふりかえると、操縦士がにっこり笑って片目をつぶって
 
みせた。バ−ナ−の角度を少し変えることに依って、回転したり前後左右に動くことが出来るらしい。
 
気球の競技で、地上のマ−クめがけて土のうを投下するのを以前テレビで見たが、地形や立ち木や風を考え
 
ながら、熱気球を操縦する技量を競うことが出来るのであろう。
 
 
 狭いゴンドラの中で、お互いに写真をうつしたりして楽しんで、少し早かったけれど40分位で母船へ無事に
 
降りてきた。思いがけない体験をして、いい土産話が出来たと喜び勇んで帰国した次第であった。
 
 
 観光客として熱気球に乗った経験は、まだ聞いた事が無いから、きっと少ないのではないだろうか。そうだと
 
すれば水上の熱気球の体験者は更に少ない筈だと思って、今度のことを友人達に話してみた。皆さんが興味深く
 
聞いてくれるが、「私も是非乗ってみたい」という人はまだいない。然し必ず出る質問は、「それで、その費用は
 
どれ位でしたか」という言葉である。困った事に現地の人の好意で案内されたものだから、いくら支払ったのか
 
私はついに知らないのである。
 
 Lake Tahoe, CA hot air balloon rides